信州旅行記(2日目-3 今回の旅のハイライト、上高地。)

さてさて。
そんなこんなでなんとかバスに乗れた我等が母娘である。
上高地への所要時間は約1時間半。
道中は殆どうたた寝していたが、ふと目覚めるとこんな景色が車窓いっぱいに広がっていた。

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うーん、美しい。
これは本命、上高地にも期待が持てるというものだ。

12時前に上高地バスターミナルに到着する。
ここでまずすべきことは、帰りのバスの便の予約をしておくことである。
これを忘れると帰れなくなる恐れがあるので気をつけよう。
現に、我々が帰る際に中年の女性二人連れが予約をしていなかったと見え右往左往しておられた。

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バスターミナル付近の紅葉。
ここでも十分美しい。

さてまずは上高地といえばここ!の定番スポットに向かおう。

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ご存じ河童橋である。
この日は土曜でしかも御覧の通りの行楽日和ということもあり、橋の上には人がわんさかと群れていた。

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もう少し奥にあるビューポイント。
ここの眺めが一番好きだ。

ここから更に奥地の明神池へと向かう。
距離は4km弱といったところだろうか。

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秋枯れの道。

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さほど派手な紅葉はないものの落ち着いた眺めが楽しめる。
ここまで来ると河童橋の喧騒が嘘のようだ。

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水のある景色っていいもんですね。

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煌びやかな紅葉も、時々ある。

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ever greenに舞い降りた一葉。

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錦鯉みたいな葉っぱ。

ところで母は、この道中えらくのったりのったりと歩いていた。
還暦過ぎのおばあさん、じゃなかったおばさんにしてもその歩みは如何にも遅い。
此方はあちこちで写真を撮るので丁度よいといえばよいのだが、余りにも色んな人(その中にはかなりの年輩の方もいらした)に追い抜かれるので一寸気になって訊いてみた。

「母よ。足でも痛いん?」

「足は痛くないけど、なんせ病み上がりやから早く歩けないんよ。
(母は去年の今頃とある手術を受けた)
あと、じっくりと景色を楽しみたいんよ。
こんな素敵なところ、さっさと歩いて行くなんて勿体ないじゃない。
みんなせっかちねえ」

普段はウルトラせっかちな母ではあるが、やはり病の影響もあってか足腰は弱っているらしい。
そうかそうか、それでは無理のないペースで歩いて貰わねば。

とまあそんなこんなで1時間ちょっとで明神池に到着した。
この池は穂高神社の神域で、入るには神社にお布施(でいいんだろうか?神社の場合)を払わねばならない。
折角ここまで来たのだから、と普通の人は皆ぞろぞろと入っていくのだが、我々は

「明神池は普通の池よ。お金出してまで見る価値なし」

という母の意向で入らなかった。
流石は大阪のおばちゃんである。

その代わりといっては何だが、山茶屋「嘉門次小屋」にて遅い昼ごはんの蕎麦をすすった。

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本当はここで焼いている岩魚の塩焼きが食べたかったのだが(写真で見える白煙は岩魚を焼いている煙である)、只今1時間待ちと聞かされて泣く泣く諦めたのであった。

さて、来た道を戻ることにしよう。

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復路は行きよりも開けた景色を眺められる。

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が、暫く歩くと林のなかへ。

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ここに来て、私はある異変に気がついた。
往路に比べ、母の歩みが異常に速いのだ。
壮年の方々は勿論、頑強そうなバックパッカーまでもずんずん追い越していく。
写真を撮っている私などはあっという間に置いていかれていってしまった。

小走りで追っかけて行って漸く追いついても、母は振り返ることもなく歩みを進める。

「ど、どしたん母よ。行きとえらい違いやない」

「何がやの」

「歩く速さやん。足は大丈夫なん?」

「ああ歩ける歩ける。
そんなことよりも私、








トイレ行きたいねん」









「…け、景色は?」

「そんなもん見てる余裕ないっちゅうねん」

足腰の弱りに上高地の自然、トイレに完敗す。

その後トイレは無事見つかり、母は目出度く再び景色を愛でることができるようになったのであった。
皆様も上高地ではトイレは計画的に。
てかあなた十分足腰回復してます、お母様。

こんな感じで(どんな感じだ)散策は無事終了し、バスターミナルの喫茶店でミルクティを飲んでほっと一息ついた。
前回は新緑の季節に訪れたが、紅葉の季節も当たり前だがやはりいいものだ。
上高地には何度来ても満足できる。

つ づ く ん だ よ

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信州旅行記(2日目-2 もう一度お気に入りの場所へ。)

さてさて快晴の朝、元気に出発した我々母娘がまず向かったのは、昨日の夕方にも訪れた長峰山であった。
昨日はご案内の通り天気がいまいちだったので、快晴と相成ったこの日にもう一度訪れておきたかったのである。

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で、晴れた日の頂上の眺めがこれ。
やはり全然違いますね。
くねくねワインディングロードを都合二回も往復した甲斐もあるってなものだ。

因みにこの日はドライブ客は多く見かけたものの(お陰で行き違いに何度かおっかない目にあった)、松茸採りと思しき人々の姿は見なかった。
母も前日に松茸充したからかとんと松茸松茸と言うことはなくなった。善き哉。

景色を堪能した後は再び高速を飛ばし、松本に戻った。
この日は上高地に向かう予定なのである。

まずは今晩泊まるシティホテルの前で荷物と母を降ろし、私はそのまま車を返しに行った。
あとで上高地へのバスが出るターミナルで合流しようという算段なのだ。

方向音痴の母には前もって地図を渡し、こんこんとホテル→ターミナルへの道順を説いて聞かせておいたのでこれだけやってりゃばっちり、と思いきやいつまでたっても待ち合わせ場所に母は現れない。
おまけにじゃんじゃん電話をかけてもちっともでやしない。
(母は携帯を携帯してはいるが、その携帯は専らご本人がかけるの専用であり、此方から幾らかけても滅多にとってはくださらないのである)

やきもきして先に上高地バスのりばに行ったところ、おおなんたることか凄まじい長蛇の列ができているではないか。
この直行バスは一日二本しか出ず、しかも私が乗ろうとしているのはその二本目、即ち最終バスなのである。
ツレは来ないしバスに乗れるのかどうか分からぬしでおたおたしていたら、やっとのことでふらふら母が現れた。
何してたんと詰問したところ、やっぱり道に迷っていたらしい。
携帯はどうしたというと、そういやそんなものもあったわねえと仰る。
呼び出したのに何故気づかぬと咎めると、そんなもん気づくわけないじゃないと胸を張って答える。

「…もうええわ。
それにしてもこの行列、どうよ」

「これ、乗れるのかしらねえ…」

「少なくとも、ここにどれだけ大型のバスが来ても座れる気がしないわ」

「…もしかして、立たせるのかしらん?」

「んなアホな。所要1時間半で、しかも上高地行きのワインディングロードやで。
そんなんしたら死屍累々ですぜ」

そうこう言っているうちにバスが来た。
大型ではあったが、やはり懸念通り列の半分くらいまでしか乗車できない。
どうなるんだろう、まさかしれっと積み残し?とおたおたしていたら(この日は何かとおたおたすることが多かった)、ほっとしたことに続いて臨時バスがやってきた。
ばんざい。
(まあこれだけ人がいれば置いていくことはなかろうが)
おかげで出遅れたにも関わらず、運良く前方の席に陣取ることができた。

つ づ く ん だ よ

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信州旅行記(2日目-1 爽やかな目覚め、そして出立)

さて、二日目の朝である。

母と行く旅行では、いつもとんでもない時間に叩き起こされるのを常とする。
しかし、今回の旅は急ぐ旅ではないし、また月曜日から木曜日まで仕事をこなしてきた私は寝不足である。
なので、母には前夜のうちにくれぐれも早く起こしてくれるなよと厳命しておいた。
その甲斐あって、








5時半に起こされました






わーゆっくりだね☆
しかし、これでも母的にはかなり妥協したのであるらしい。
こんなにゆっくり寝かせてやったのよというドヤ顔で起こされたのであれば、娘としては粛々として起きざるを得ないではないか。

という訳で、起こされちまったものは仕方がないので朝風呂に入ることにする。

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風呂から見えた景色。
朝日を真正面に受けた常念岳の眺めが美しい。

母は朝から元気いっぱいで、朝の散歩に行こうよ行こうよとうるさい。

「朝の空気は気持ちいいよー。ちょっとそこいら歩こうよ」

「ふーん。そうだろうねえ。
でも母、あれ見ても外に行きたい?」

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「…やめとくわ」
「そうだねえ。その方がいいねえ」

そうこうしていると朝ごはんの時間になったので食事処に向かうべく部屋を出た。
ガラス張りになっている非常用扉の前を通ると、何やら視線を感じる。
顔を上げるとそこにいたものは…

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もういっちょ。

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見返り美人である。

図らずも朝からいろんな動物を見ることができた。
流石は信州の山の宿だ。

で、朝ごはん。
旅の宿の朝ごはんは品数が多くて、いつも朝から洗い物大変だなあと思ってしまう。

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その一例(勿論、これだけじゃないよ)

特筆すべき点は、うーん、特になかった。
というと聞こえは悪いが、どれもこれも平均的に美味しかったので良しとしよう。
こうやっておかずが沢山出てくるとご飯がついつい進んでしまう。
滅多におかわりしない、いやそもそも滅多に白米自体食べぬ私が3杯ほどもおかわりしてしまった。食べすぎ。

その後食べすぎたお腹をさすりつつ、早めにチェックアウトを済ませた。
再び車で向かった先はというと…
次回の お た の し み
#ご想像の通り、そんなたいそうな話ではないのですが。

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信州旅行記(1日目-5 お宿にご飯)

さて、母を引き連れ到着したのは本日のお宿「ほりで~ゆ」。
公共の宿ではあるが、施設も新しく巷の評判も宜しいお宿だ。
今回はこの宿に二室しかないという露天風呂つき客室を予約しているのである。

フロントデスクにてチェックインしていると、おおなんとデスクの傍らに
「一日10組様限定 松茸メニュー」
なるチラシが置いてあるではないか。
頭の中が松茸でいっぱいの母上に上奏したところ即刻注文しておくよう命を受けたので、取り急ぎ土瓶蒸とシンプルな焼きものを追加注文しておいた。

こりゃ今晩が楽しみだわとほくそ笑みつつ、ボーイさん(内田百閒流に言うとボイ)に先導され部屋へと向かう。
噂の露天風呂つき客室は、さほど広くもなくめぼしい調度がある訳でもなかったが真新しくどこもぴかぴかしており、なかなか気持ちの良い和室であった。

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肝心のお風呂も新しく、おまけに湯船からなんと名峰・常念岳を眺めることができるのである。

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うっすらとカメラを構える私と母が映りこんでますな

という訳で、早速このお風呂に母と二人代わる代わる入ってぷっはーと一息ついた。
当然気持ち良いことこの上ない。
そして、湯上りには当然麦酒である。
途中のコンビニで仕入れたプレミアムモルツ(旅先では贅沢するのである)で再びぷっはーと一息、いや二息三息つく。
いやあ極楽極楽。

さてさて、そうこういしているうちにお待ちかねのご飯の時間と相成った。
食事処へ案内してくれた仲居さん曰く、今回私達が申し込んでおいたコース(ちょっといい奴)には既に土瓶蒸がついていたので申込はキャンセルさせて頂きましたとのことである。
へえ、デフォで土瓶蒸がついているのか。
それは他のメニューにも期待が持てそうである。

以下コースのご紹介である。
メニュー名はおしながき(小さいのがついていた)に従った。

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前菜
(栗と湿地白和え、海老の艶煮、子持ち鮎有馬煮、蓮根せんべい、干柿独竜揚げ)

…うん。まあまあ。


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先付 
(茄子豆腐)

…うーん。

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刺身 
(信州サーモン、信濃雪鱒)

これらはなかなか美味しかった。
信州サーモンという名はこの後もよく見かけた。
只今大々的に売出中であるらしい。

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土瓶蒸し(開けた写真を撮らんかいなと)
(鱧、松茸、銀杏、海老)

…あれ。
この土瓶蒸、銀杏入ってなかったけど。

とまれこれもなかなか美味しかった。
お出汁の加減は好みではなかったが。
松茸は流石に香り高いものであった。

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揚げ物
(鱸のおかき揚げ、紅玉、ししとう)

これがねえ、もうねえ、がっかりだった。
だって冷えてたんですもの。
揚げ物がですよ。揚げ物が。

私がお食事に求める最低ラインは
「熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに」
なのだけど、これが守られているケースは案外少ない。
しかし今回の冷えっぷりはそんな言葉を持ち出すまでもなく、近年稀に見る酷さであった。
おかき揚げなんて、おかきがしけて歯にくっついて大変だったし。
紅玉共々、素材もアイデアも悪くないだけにショックな一品であった。

余りのことに母が仲居さんに

「揚げ物が冷えてたのはがっかりでしたねえ」

とやんわり嫌味をいったところ、いやあの板前さんがあーのこーのと頻りに言い訳をしていたが、できたてのものを運ばないというのはやはりサーブのミスだと思う。

焼き物
(牛肉、エリンギ、はくれい茸、しめじ、焼葱、三つ葉)

あら、余りのショックに写真を撮っていなかったようだ。
これもまた冷えていた。
これまた肉も悪くないし、茸も美味しかっただけになんだかなあと思ったことであった。

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松茸炭火焼

追加注文した一品である。
これは、旨かった。香りが最高。
今までのことは水に流してもよいかなあと思える程であった。
ま、ここでつらつら書き連ねてるということは水に流してなかったということなんですけどね。

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お凌ぎ
(信州そば)

母がクレームをつけてから、仲居さんは急に気を遣いだした。

「次お蕎麦なんですけど、今召しあがっているのが済みましたら持って参りましょうか?」

ほほう、今度は茹でたてを持ってきてくれるのかしらん。
と思いきやこのお蕎麦、茹でてたっぷり2時間は冷蔵庫で冷えていました的お味とテクスチュアのシロモノであった。
昼間食べた本物の信州そばとは雲泥の差である。

ま、大勢の人に食事を供する温泉宿で茹でたて蕎麦持ってこい!という程私も傲慢な人間ではない。
でも、わざわざ聞いてくださっててこれかいな、と思った次第。
それだけ。

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煮物
(海老芋 蟹 湯葉 春菊)

これは、あつあつだった。えらい。
いかにもレンジでチン的あつあつではあったが、いいんです。それでも。
さっきの揚げ物もチンして貰えばよかったと後悔したことであった。

蒸し物
(茸茶碗蒸し)

あら、これも写真がないや。
それもそのはず、この茶碗蒸しもなかなか驚愕の一品だったんですのよ奥様。

「板さんは調味料を入れ忘れたか、上にあんかなにかをかけ忘れたのであろう」

というのが母と私の共同見解であった。

止椀
(きのこ汁)

食事
(安曇野黒豆御飯)

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みそ汁もご飯は普通に美味しかった。
(美味しかった時のコメントは淡白というのはなかなか性格の悪い話である)

この後デザートに芋羊羹と柿が出たが、お腹がくちくてとてもじゃないが食べられなかった。
簡単につめてもらって部屋に持ち帰ったけれども結局食べたのは母だけ。
やー、苦しかった。

とまあこれにてコースは終了。
冷え冷え(というのは大袈裟だが)事件は若干、いやかなり残念だったが(しつこいですねえ)他はまあこんなもんじゃないの的レヴェルの食事であった。
(その割に文句が多いのは御愛嬌)
なんといってもここは公共の宿である。
露天風呂つき客室、そして一応ちゃんとしたご飯がこの値段で(詳細は伏せますが)楽しめたのであれば言うことはない。

そんなこんなで、はちきれそうなお腹を抱えくるしーくるしーと呻きつつ一日目は終了したのであった。

つづくねん

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信州旅行記(1日目‐4 秋の味覚はあらまほしき)

さて、わさび農園の次に向かったのは長峰山という山である。
この山の頂上に辿りつく為には対向車の陰に怯えつつ狭隘なワインディングロードを延々と行かねばならないのだが、その甲斐は十分にある。
だって、こんな景色が待ち受けているのだから。

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この日は生憎の曇り空で胸がすかーっと晴れるような眺めとはいかなかったが、それでも北アルプスと安曇野の村落のコントラストは十分に楽しめた。

さて。
この頂上に向かうまでのワインディングロードの途中、路駐している車を何台か見かけた。

「ったく、ただでも道路幅狭いのにこういうの困るわあ。運転しにくいっちゅうねん。
こんな山奥で車停めて、一体何してんだろ」

「…わかった。何してるか」

「へ?」

「松茸や」

「え?」

「この山、さっきから見てたらアカマツ多いのよ。間違いないわ」

「成る程ねえ」

「やーん、なんかめっちゃ松茸食べたくなってきた。
私達もこっそり山入って採ってみようか」

「やめてください。捕まります」

そんな会話を交わしていると、だしぬけに路肩からひょっこりとおじいさんが現れた。
手にはななんと、巨大な松茸を三本も握ってらっしゃるではないか。

「ちょっとあんた見たー!?今の。すっごく大きかったわよ」

「うんうん、見た見た。すごかったねえ」

「やっぱり私達も採りにいってみない?」

「だから、それはご法度ですってば」

「それじゃあ、さっきのおじいさんちょっと拉致しちゃっt」

「余計にご法度ですからやめてください」

この後母は頭がすっかり松茸モードになってしまい、宿に到着するまでずっと憑かれたかのように延々と助手席で松茸松茸松茸松茸と唱え続け、私はほとほと閉口したのであった。

「ねえ、今日のお宿のごはんに松茸、出るの?」

「さあ。一応1ランク上のコースにはしたけどね」

「もしもでなかったらどうするのよう」

「…別にどうもしませんが」

「なんとか松茸出して貰うようにお願いしてよう。松茸松茸松茸松茸」

「ええいうるさい」

そんな松茸の香り漂う(そんなよいものではないが)会話を交わしているうちに本日のお宿に到着したのであった。

つづくってばつづくよ

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信州旅行記(一日目―3・大王わさび園)

美術館(の前の駐車場)の景色を堪能した後には大王わさび園へ。
ここは水辺の景色が兎に角美しいのである。

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この水車、黒澤映画の「夢」のシーンで出てきたそうな。
とはいっても映画に疎い私にはとんと分からぬが。

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川の水草はバイカモに似ているけれど、多分違う種であろう。
水はご覧の通り澄み切っている。
良質のわさびを育むのもむべなるかな。
母は、

「こんなところをオフィーリアは流れていったのねえ」

と感慨深げだった。
うん、違うと思うよ。

さて。
ここではわさびソフトを食べねばならない。
普通のバニラソフトにわさびの粒々が練りこまれた、なかなか乙粋な味わいのソフトである。
強いてそんなもの入れんでも、などという野暮はいいっこなしなのである。
そんなことをいったら上には上がある。

なんてったって筆者はその昔、「かきおこ」(牡蠣のお好み焼き)で有名な岡山は日生で「牡蠣フライソフト」を食したことがあるのだ。
その外観は誠に禍々、いや麗しく、普通のバニラソフトに良く冷えた(ここがポイントらしい)ソースつきの牡蠣フライが二つぐさぐさっと突き刺さっているのである。
「強いてそんなもん入れんでも」という言葉はそんじょそこらのオモシロソフトにではなく、このソフトのためにこそとっておいて頂きたい。

因みに味はというと、牡蠣フライにソフト、この二つの要素が余りにも相容れなさ過ぎて
・冷えた牡蠣フライ
・バニラソフト
二種の風味がそれぞれ全く混ざり合うことなく交互に襲ってくるのである。
それは全く「襲ってきた」という以外形容を思いつかぬような鮮烈な体験であった。

閑話休題。
我らがわさびソフトは斯くの如く鮮烈な(婉曲的表現)ソフトでは全くなく、ゲテが苦手だという母も旨い旨いとぺろぺろ食べてしまった。

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見た目も爽やかじゃござんせんか。

ときに、ソフトを食べつつ眺めていたのはこんな銅像である。

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こうなるとわさび「様」付けをしなくてはならないようだ。
ちょっぴり海老ふりゃーに見えなくもないが。

さてさて。
園内には何柱か道祖神がある。
(一応「神」様だから数え方は柱、でいいのよね)


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夫婦、若しくはカップルでよりそい、なかなか微笑ましい佇まいである。
更によく見ると…

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あら、女性の方、ほんのりお口に紅なんてさしちゃっておめかししてるのね。
と和やかに見ていると、清掃係と思しきおばさんが現れ、

「ほんとにもう!また誰かがこんないたずらして…」

と憤然と口元を拭き始めた。

「あ、あれ。
それって最初から色づけしてるのではないのですか?」

「違いますよう。ほら、ここって絵を書く人が沢山来るでしょ?
その人たちが絵の具でいたずらしていくんですよ」

「…へえ、そうでしたか」

おばさんには大変申し訳ないのであるが、私はほんのり紅をさした道祖神(女神?)の方がどことなく色っぽくよいものだなあと思ったことであった。
多分、絵描きの皆さんも同じ事を考えたんでしょうな。

その後、売店で野沢菜わさび漬け(これほんとに好きなのよ)をしこたま買い込み、家への配送手続きをしてミッションコンプリートと相成ったので次なる目的地に向かうことにした。

つづくよ

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信州旅行記(一日目-2・蕎麦じゃ蕎麦じゃ。)

さて、気づけば時は丁度お昼時である。
信州に来たならば蕎麦じゃ蕎麦じゃとうるさい母を、事前に下調べをしておいた「翁」というお店にお連れする。

なんでもこのお店、大変人気でその名は県外にまで轟き(故に私のような上方者もふらふら惹きつけられるのである)お昼には行列ができることもある、という事前情報を仕入れていたので覚悟して行ったのだが、なんのなんの客は我々を含めて二組のみであった。
平日だったからかしらん。

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なかなかにシックな店構えである。

ここは蕎麦もさることながら、大きな窓からの北アルプスの眺めが見事なのである。

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ほらね。


勿論蕎麦も絶品だ。
この日頼んだのは辛味大根蕎麦。
辛味大根が、そりゃもう、これほどかってな位悶絶する程に辛い。
でもやっぱり、蕎麦の薬味にするにはこれくらいでなくっちゃあなんねえ。うん。

そして肝心の蕎麦は、比べるのも野暮な話だけど、畿内で食べるそれとは別物のように(実際別物だが)旨かった。
こんな絶品蕎麦の相方にはきりりと冷えた辛口の日本酒があらまほしいのであるが、あな口惜しや運転中の身、蕎麦湯でぐっと我慢したのであった。

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このシチュエーションでお銚子がないだなんて。

お腹がくちくなった後はすぐそこに隣接している美術館、ではなくその駐車場へ。
ここからの景色がまたよいのである。

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目の前の丘陵には葡萄の木が植えられている。
実は小ぶりだが丁度良い熟れ具合のようであった。
これはワイン用の品種かもしれない。

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儚げな蜻蛉さんが2頭。
(蜻蛉って1頭、2頭って数えるんだって)

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季節外れの綿帽子。
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葡萄の木を煽りで撮ってみる。
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蝶々さん。

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角度を違えると別人(別蝶?)みたい。
(苦手な人ごめんなさいよ)
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そんなこんなで暫し撮影タイムに没頭していると、痺れを切らした母親にもうええかげんに次のところ行くよ!とお尻を蹴られた。
これは修辞学的表現でも何でもなく、よい被写体を求め這いつくばっていたところをぺこんと蹴られたのである。
まあ、流石に土足ではなく膝蹴りでしたけどね。
(だったらいいのかという話だが)

てな訳でこれ以上もたもたしていると何をされるかわからないので、しぶしぶ次の目的地に向かうことにした。

ったく、親ってのは遠慮もないし容赦もねえ、と思いつつ つづくよ

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信州旅行記(一日目-1・安曇野到着。)

10月も終わりの金曜日。
朝早くに出立し、まずはJR京都に向かう。

今回の旅の連れは母上だ。
よって、私めが二人分の荷物が詰まったスーツケースを運ばねばならない。
朝のラッシュのK電車やらK電車を乗り継ぎ、エスカレーターなきホームの階段をスーツケース担いでうおりゃー!と登り、やっとのことで新幹線のりばに辿りついたのは発車時刻30分前。
流石いらちの浪速の母娘だ。

こうなりゃ一本早めるかとも思ったが、みどりの窓口は例によって大行列だったので(もう21世紀だってのにあれ、なんとかならないんですかね)おとなしく待合室で二人並んで腰かけ朝ごはんのパンをあむあむと食す。
ドンク(だったな、確か)のわさびフランス、なかなかに旨かった。
わさびフランスといってもフランスパンにわさびを練りこんでいる訳ではなく、明太フランスよろしくお腹の切り目にわさびマヨネーズを詰めて焼いたものなのだが、このマッチングがかなりいけるのである。
なのに母上、最後の最後に肝心のわさマヨ部分をぼったりと落とす。あーあ。

そうこうしているうちに東京行きのぞみが滑り込んできたので、慌てて乗り込む。
毎朝毎朝、その性質から致し方ないとはいえ蹴り飛ばしたいほどスローモーなモノレールに乗っている身にはのぞみの速さは殆ど驚異的に映った。
またここんとこ、長距離異動は飛行機ばっかりなので余計に「列車の速さ」というものが新鮮に思えたということもあるのだろう。
本当は今回も飛行機で行きたかったのだが、なんたることかJALの例のあの騒動で大阪ー松本間の便が昨年を持って運行中止(廃止だろうな、実質)となってしまったのだ。
あのクラシカルなプロペラ機(YS-11だったか?)、好きだったのになあ。

という訳で今現在、我ら畿内の民が長野は松本に行くには車か列車で行くより方策はない。
最短行路は名古屋まで新幹線/名古屋から特急しなの号に乗車するルートだ。
今回、我々もこのルートを辿っている。
列車にはワイドビューという愛称?がついているが、特に窓がでっかい訳でもなく至ってフツーのJR特急車両である。
この列車が木曾の山の中、旧野麦街道をくねくねとひた走るのである。

途中、浦島太郎がここで玉手箱を開けたという岩、「寝覚の床」を車窓より臨む。
なんでも浦島くん、ここいらの出身らしいのだが、この山奥では海岸で亀いじめの子ども達を諌めるというシチュエーションはちょっと考えにくいのではあるまいか。
しかしながら、この岩の上には「浦島堂」てなものまで建立されているらしい。
そこまで既成事実にしてしまえば、話の肝である筈の海の有無など問題にならなくなるのですな。なるほどね。

とまあそんな深山の中を行く我がワイドビューなのだが、生憎曇りがちで空模様は余りすっきりとせず、また猛暑の影響か紅葉も殆ど進んでおらず、よって折角の車窓の景色もぱっとしない。
そんな訳でさほど風景を眺めるでもなく本を読んだり、うとうと眠ったりしているうちに松本に到着した。
駅から100mの駅レンタカー(便利ですね)で茶色のN産「キューブ」を借り(母曰く、「でっかいチョコレートみたいな車ね」と)、一路安曇野を目指す。
途中ETCを忘れていたという失策が判明したが、高速はIC1つ分しか乗らないし渋滞も皆無だったのでさしたる痛痒は感じなかった。

さて、2年と少しぶりの安曇野である。
前回は新緑の季節に訪れたのであったが、秋真っ只中の今回は当然ながらがらっと雰囲気が変わっていた。
家々の庭先には申し合わせたかのように柿の木があり、たわわに実をつけている。
あの柿ほしーなー、一つ二つ取っちゃだめかなあーという母を、ありゃあ渋柿だから干さないと食えたものじゃござんせんよと「すっぱいぶどう」方式でいなす。
(ちょっと違うけど)

つづくよ

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